著者: | ゴードン・スティーヴンス |
読み: | Stevens, Gordon |
翻訳: | 藤倉 秀彦 |
題名: | 『カーラのゲーム』 |
出版: | 創元ノヴェルス |
発行: | 2000 |
読了: | 2000/12/E |
評価: | A: ★★★★★ |
感想: |
1994年のボスニア。内戦でSAS隊員と出会ったカーラが、平凡な妻そして母から、世界を震撼させるテロリストになりハイジャックを起こす。 個人にとっての戦争の意味のなさ・希薄さを新しい姿で描いて成功している。 ボスニア内戦の置かれた状況が良く分かる。戦争が一般市民にもたらすものが伝わってくる。希望がなくなるということ、そして希望を捨てないということが何を意味するのかを語りかけてくる。 揺れ動く主人公の心の動きを描く表現が印象的。「神様私を死なせないで。神様私を死なせて」といったように、相反する、でもどちらも心の底からの願い、という引き裂かれた思いが痛烈に伝わってきた。 目の前の一人の命の重さと壁の向こうの数人、数十人の命の重さは違う。前者が重い。一人の知人(味方)の死と数百の他人(敵)の死は重さが違う。前者が重い。 |