著者: | 三好 万季 |
読み: | みよし まき |
題名: | 『四人はなぜ死んだのか』 |
出版: | 文春文庫 |
発行: | 2001(1999) |
解説: | 渡辺 淳一 |
読了: | 2001/06/10 |
評価: | A: ★★★★★ |
感想: |
和歌山毒入りカレー事件に関してマスコミの報道に疑問を持った著者が自力で調査した結果、犯人は逮捕された特定の人物だけではなく、保健所、病院、警察、マスコミでもあるという結論に至る。 当初は中学三年の夏休みの自由研究課題として発表され、その後文芸春秋への投稿作品、単行本、を経て文庫化される。 著者が当時中学三年生であったことにも驚かされたが、それ以上にこういったマスコミ報道への疑問を持ち自分でその後調べようとする姿勢に打たれた。自分がすっかり無くしてしまったものではないか。 内容の素晴らしさは言うまでもない。 当初「食中毒」と報道されたことに対し、一般的な食中毒とは症状が異なること、にも関わらずそれを現場で誰も疑わず見当外れな処置をしたこと、その後毒物による中毒だと方向転換された後も、砒素/青酸という症状が異なる中毒だということを現場の保健所・病院が見極められず、警察発表に引きずられ砒素中毒を悪化させる治療を行っていたこと、などの事実を次々と明らかにしていく。 そして、彼女が一人で一般に公開されている情報から正しい結論にたどりつけたのに、専門家達が「わからない」と言い続けることへの怠慢を叱咤する。 また、後から揚げ足とりとして他人の失敗点を指摘するだけではダメだと、砒素中毒に対する対処方法はないかと独自に調査を行い、企業への研究依頼・寄付まで取り付けてしまう。 調査の中で出会ったネットワークを通じて、南アジアなどで地下水の汲み上げすぎが原因と見られる飲料水経由の砒素中毒に対しても行動を始めている。 後半は、こういった論文を書いた彼女の背景(主に家庭)や、論文の続編、中学を卒業してから今までの紆余曲折、中学二年生の夏休みの自由研究など。 渡辺淳一の解説は最悪。読後の興奮が一気に醒める。 |