著者: | 笠井 潔 |
読み: | かさい きよし |
題名: | 『哲学者の密室』 |
出版: | 光文社文庫 |
発行: | 1999(1996/1992) |
読了: | 2001/06/17 |
評価: | A: ★★★★★ |
感想: |
大きな大きな物語。 ソ連が参戦し徐々に退却を始めた頃のコフカ強制収容所と、5月革命が終わり嵐の後の気だるさの支配するパリ郊外。30年の時と場所を越えた二つの密室に共通するものとは。 フッサールと彼の「死の哲学」批判を延々単行本3冊分のボリュームに渡って繰り広げる作者の情熱としつこさに圧倒される。 近代的自我と密室殺人事件との相似性、意味のある死と無意味な死の比較検討、戦争中のナチスの行為に対する一般市民や戦後生まれの世代の責任の有無、推理小説における密室とは何か、など非常に興味深い問題提起を行っている。 |