YAMA's BOOK SHELF

北村 薫(きたむら かおる)

『秋の花』

本のデータ
著者: 北村 薫
読み: きたむら かおる
題名: 『秋の花』
出版: 創元推理文庫
発行: 1997(1991)
個人データ
読了: 2001/08/27
評価: B+: ★★★★
感想:

『空飛ぶ馬』『夜の蝉』に続く第三部。高校生・大学生が、ある程度以上思い入れのあった身近な人の死に触れてゆれ動く。

このシリーズこの作者にしては珍しく人が死ぬ。謎解きの要素も少ない。

福田和也はこの作品のテーマを「人はどんなに若く元気に見えてもいつか必ず死ぬということ」だという。簡潔明瞭で的を得ているが、僕は違ったところが気になって仕方なかった:誰か知っている人が死んだら悲しまなくてはいけないのか、という点。少なくとも近年の僕は、近い人であろうとなかろうと、自分以外のありとあらゆる他人の喜怒哀楽に、それが自分に向かって来ない限り心を動かされない。自分は何か間違っているのではないか、どこで間違ったのだろう。この不安に答えて欲しい。

重松清の『エイジ』で描かれる"同級生"という関係は、世間からは近いとされているけど実際にはそれほどでもない立場。"たかが同級生"を描きつつも、最後に明るく嘘っぽく"でも同級生"になってしまう。

この作品の場合、どちらかというと他人への思いやり、他人の気持ちを理解すること、親/親友/近所の子/親一般といった関係性に焦点が広がってしまい、"とまどう私"がぼやけてしまっている。例えそこに作者の狙いがなかったとしても残念で仕方ない。

$Revision: 1.5 $, $Date: 2003/06/29 20:33:29 $

Copyright (C) 2000-2002 Mt. YAMA