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岩井 志麻子(いわい しまこ)

『ぼっけえ、きょうてえ』

本のデータ
著者: 岩井 志麻子
読み: いわい しまこ
題名: 『ぼっけえ、きょうてえ』
出版: 角川書店
発行: 1999
受賞: 第9回日本ホラー大賞受賞
個人データ
読了: 2001/08/29
評価: C+: ★★★
感想:

岡山言葉で語られる遊女の過去、現在が寝物語に語られる。

「学校の怪談」といったような意味でのホラーではない。人間の業、暗黒面をほじくり返す、見てはいけないものを見せられるという意味でホラー。

この世とあの世(もしくは妖怪、幽霊などの世界)との境界の低さと、この世での人間同士の境界の高さ深さを執拗に書きたてる。男女の嫉妬、性欲、差別欲、征服欲、けがれ、疑心暗鬼、狂気、あきらめ、ずるさ、などがこれでもかこれでもかと描かれ、確かに背筋が寒くなる。

表題作ほか「密告函」「あまぞわい」「依って件の如し」。

日本ホラー大賞の選考委員荒俣宏は「プロレタリアート文学はホラーとして再評価されるべき」と書いているが、この作品を読むと逆に「このホラーはプロレタリアート小説として再評価されるべき」と感じる。明治の貧しい農村・漁村、そこで生活する人々の心の闇が痛々しい。

$Revision: 1.4 $, $Date: 2003/06/29 20:33:29 $

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