著者: | 村上 春樹 |
読み: | むらかみ はるき |
題名: | 『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』 |
出版: | 新潮文庫 |
発行: | 1985(1988) |
読了: | 2001/08/12 |
評価: | A: ★★★★★ |
感想: |
再読。 「世界の終わり」と「ハードボイルドワンダーランド」の二つの物語が初めはバラバラに、徐々に絡み合いながら進行する。 核となるのは「心」。善良な心、邪悪な心、かたくなな心、イノセントな(それゆえに無力な)心‥。主人公の心は、自分という小さな小さな領域と全世界というとてつもなく大きな領域が互いに入れ子になった構造として描かれる。 『ねじまき鳥クロニクル』では井戸と大平原に象徴されていたような、対立軸がメビウスの輪になっているペアを探すのも一興。例えば地下(=光がない)と影(=光がないとできない)の対比とか。 Nobles obligeともまた違った形の「立ち向かわなければならないもの」も印象的。教訓になりがちなこのテーマを丁寧に、感情移入しやすく描いているため反発やしらけを感じるより自分のこととして引き受けられる。 |