著者: | 佐藤 俊樹 |
読み: | さとう としき |
題名: | 『不平等社会日本』 |
出版: | 中公新書 |
発行: | 2000 |
読了: | 2001/11/04 |
評価: | B+: ★★★★ |
感想: |
日本はすでに一億総中流社会ではなくなっている、ということを社会調査の数字を利用しながら明解に示す。 中流という言葉は、収入だけではなく社会的な階層(主に職業)も含んでのもの。 本書が面白いのは、一億総中流社会という幻想を数字を挙げて否定したことではなく、その好ましい代替・克服とされている実力主義社会の欺瞞性を指摘している点にある。 一見実力と思われている学力(学歴)が実際にはかなり家庭環境という本人の努力や実力ではない遺産に支えられている点を示し、それらの自覚がないまま上辺だけの実力社会に突入すれば機会の平等さを欠いた階級格差が拡大する一方の社会の到来しかないことを示唆する。 また、それだけにとどまらず、ノーブレス・オブライジュといった意識や責任感のな地位だけのエリートが誕生することによる日本社会の幣束感も指摘していて興味深い。知的エリートたちは、様々な関門をゲーム感覚でクリアして官僚などになるだけであるため、権限に伴う責任に自覚がなく誰も責任をとらない。そうでない人々は、努力してもそれが報われない(社会的階層を上昇できない)ことに気がついているため誰も努力しない、という薄ら寒い社会ができあがりつつあるという。 |