著者: | ジョン・ダニング |
読み: | John Dunning |
翻訳: | 三川 基好 |
題名: | 『深夜特別放送』 |
出版: | ハヤカワ・ミステリ文庫 |
発行: | 2001/10(2001/01) |
読了: | 2001/12/13 |
評価: | A-: ★★★★★ |
感想: |
1940年代のアメリカ東海岸を舞台としたミステリー。訳の分からないうちに陰謀に巻き込まれたらしい主人公が、真犯人を捜しているうちに自分の埋もれていた才能と愛に気がつき悩む。個人と祖国、男と女、金と名誉と才能の生かし方、プライドと保身と勇気、などなどこれでもかと言わんばかりの対立軸を見事に描ききっている。 主人公にことよせて、戦争になったときの人間の振る舞いを鋭くえぐり出している。 ビン・ラディンで浮き足立ち憎しみに駆られているアメリカ人に読んでもらいたい。ただ、犯人の本当の動機が理解できない。それが減点。(直接の動機は分かったけれど、どうしてそれが動機足り得るのかというところが理解できない。)また読み返してみるか、、、 上巻は2回読んだんだけど。 ラジオに関する感動的なセリフ。 「ラジオは過去四世紀の間のもっとも偉大な発明だ。世界を大きく動かしたという点では、グーテンベルグの活字に匹敵する。それなのに、消臭石鹸やらマグネシウム入り牛乳を少しでも多く売ろうという馬鹿げた騒ぎのために、すっかり卑小なものにされてしまっている」(中略) 「活字を発明したグーテンベルグが最初にしたことのひとつが、すばらしい聖書を印刷することだった。ラジオが発明されて最初になされたのは、スポンサー料をいくらまでつりあげられるかという議論と、番組はどこまで馬鹿げたものにしてもいいのかという相談だった。今の方向性で進んでいったら、いずれ聴くに値する番組はなくなるぞ。それに、今はタブーだらけだ。ネットワークレベルでは役所があらゆることを仕切っていて、それが年々ひどくなっている。わたしはほとんど病的なほどの将来に対する恐れをいだいていてね。ラジオの黄金時代が去ってしまうのではないかというのではなく、とうとう黄金時代は来ないままになってしまうのではないかという恐れだ。今から五十年経ったら、ラジオは広告屋と阿呆だけのためのメディア、空中を飛び交う売春宿みたいなものになってしまうのではないだろうか。」 原題:"Two O'clock, Eastern Wartime" |