著者: | 辺見 じゅん |
読み: | へんみ じゅん |
題名: | 『収容所(ワーゲリ)から来た遺書』 |
出版: | 文春文庫 |
発行: | 1992(1989) |
受賞: | 第11回講談社ノンフィクション賞受賞 |
読了: | 2002/04/10 |
評価: | B-: ★★★★ |
感想: |
第二次世界大戦後に旧ソ連の収容所に引っ張られた男たちの物語。語義的には「強制」収容所ではなく「矯正」収容所だという指摘に皮肉と欺瞞を覚える。なるほど。 体裁としてはよくある「苦境にあって希望と人間性を失わなかった」戦争美談だが、主人公の山本の並外れた前向きで影響力のある姿に感動。また、彼の遺書が、没収される危険性から同僚の記憶のみに託され、数十年後を経て完成されたという力強さや、彼自身の手による詩や短歌にも。 大勢の極悪非道なロシア人、時々登場する「いい人」のロシア人、裏切り者のずるい日本人、あくまでも清く正しく美しい(時に哀しい)主人公たちとその家族という構図、そして捕虜になる時点がゼロでそれ以前にはさかのぼらない時間軸は、日本遺族会のヒステリーを連想させる。 |