著者: | Whiting, Robert |
読み: | ロバート・ホワイティング |
翻訳: | 松井 みどり |
題名: | 『東京アンダーワールド』 |
出版: | 角川文庫 |
発行: | 2002(2000) |
読了: | 2002/04/29 |
評価: | B+: ★★★★ |
感想: |
面白くて一気に読んでしまった。 裏返して表紙をもう一度眺め、初めて気がついた。『東京アンダーグラウンド』だと思っていたけど違う!『東京アンダーワールド』だ! 日本語だとどちらも「裏の世界」ということになってしまうけど、Underworldの方には、天上界に対するこの世、という意味もある。 東京はおしゃれなだけの街ではない。永田町や赤坂だけが政界の泥で汚れているのではない。六本木にはニックが、力道山が、夜の帝王やら女王やら有象無象がいたのだ、という姿を戦後から一気に書き切っている。この一気に、ニックにことよせて一気呵成に、というところが素晴らしい。 -- 力道山の朝鮮とのかかわり、苦しみや悩みを知りたいのなら、著者自身が参考にした牛島秀彦や李の『もう一人の力道山』!!(小学館文庫)の方がよっぽどいい。 政治家と財界の癒着振り、金権政治を知るなら立花隆や猪瀬直樹を読めばいい。 引用されているのが週刊誌ばかりで情報の根拠としては怪しげだと思うのなら、公的文書と主要な新聞からの引用だけで出来上がった研究書を読めばいい。 この本の魅力はそんなところにはない。 戦後という時代に、ニックというでたらめで憎めない男をはじめとする"不良ガイジン"たち、ヤクザ、政治家などが入り乱れた欲望と情熱の渦巻く「もう一つの東京」「裏の顔」「地下であると同時にこの世」、つまり六本木、それを生々しく疾走感あふれる構成で描いているところにある。例えて言うなら、夜明けのジェットコースター。 (翻訳も素晴らしい。) |