著者: | 貫井 徳郎 |
読み: | ぬくい とくろう |
題名: | 『プリズム』 |
出版: | 創元推理文庫 |
発行: | 2003/01(1999/10) |
読了: | 2003/01/26 |
評価: | C+: ★★★ |
感想: |
謎の死をとげた人物をめぐり、様々な立場の人が様々な推論を語る。教え子の小学生、同僚、元彼、不倫相手、そして、真相は、、、 タイトルが示すように、死者の生前の姿がプリズムを通して示される。 暇つぶしにはなるけれど、というレベル。ところが、解説によれば人物像が一定していない、というのは(本格)推理小説にとっては画期的なことらしいのだ。つまり、探偵による心理分析が可能になるためには、犯人もしくは容疑者は状況に関わらず一貫した言動をとる必要がある。もし違う立場の人がそれぞれ異なる人物像を持っていたとすれば、探偵による推理は真理真相ではなく、一つの見方というレベルに過ぎなくなってしまう。それでは探偵小説は成り立たない。……なるほど、そのとおりだ。そういった観点から読む限り、この小説は非常に面白い。しかし、推理小説という狭いジャンルの常識を知らないものにとってはどうでもいいこと。仲間内でしか通用しない素晴らしさを誉める気にはならない。 |