著者: | 司馬 遼太郎 |
読み: | しば りょうたろう |
題名: | 『城塞―上―』 |
出版: | 新潮文庫 |
発行: | 1976/12(1971/12) |
読了: | 2003/02/02 |
評価: | C: ★★★ |
感想: |
関が原の合戦の後、徳川家康が豊臣秀吉の築いた大阪城をその頂点とする帝国の塞(とりで)を切り崩していく過程を描く。 会社の同僚の勧めで始めて司馬遼太郎を読んでみたが、とまどいの連続。 語り口、テンポ、合間合間に登場して解説を挟む著者の登場など全てに馴染めない。この一冊をもって司馬遼太郎を語るわけにはいかないが、これがかの司馬遼か、と幻滅を感じずにはいられない。この著者の何がかも多くの人をとりこにするのだろう。 石原千秋の『大学入試のための小説入門』を読んだ影響だろうか、「この作品(のテーマ)を一文で表す」ということに挑戦してみると、このコメントの冒頭の一文になる。では、徳川家康が主人公かというとそうではない。様々な登場人物が舞台狭しと暴れまわる痛快な歴史小説かというとそうでもない。歴史的な事件をもとに教訓を引き出すタイプかというと、そういった側面はあるものの小咄といった位置づけで主題ではない。既存の歴史観あるいは人物像の修正を迫るような画期的な視点を提供するかというと、部分的にはあるといった程度。いろいろな登場人物がいろいろな事件や出来事に対面して挫折したり突破したり回避したりしながら生きていましたとさ、にまとめられてしまう。 |