著者: | 東 浩紀 |
読み: | あずま ひろき |
題名: | 『動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会―』 |
出版: | 講談社新書 |
発行: | 2002/11 |
読了: | 2003/02/16 |
評価: | B: ★★★★ |
感想: |
日本の「オタク」から日本の将来、世界の将来が見えるという。ポストモダンの世界に最も順応しているオタクの消費行動が「データベース型世界観」「動物的欲求への反応」をはっきりと示していることから、これが徐々に広がっていると予想している。現代日本、そして現代社会を読み解くためにはおたく理解が近道でありまた不可欠であるとし、大塚英志の物語消費論を敬意を払いながら越えてゆく。 近代までの世界は、人間には見えない神の手になる真理があり、人の営みとはその構造を明らかにしていくことに他ならなかった。背後にある真理 = 本物 = 大きな物語であり、人の活動や作品はどれだけその真理に迫ったかで評価された。近代以降、複製技術の発達によりコピーが出回るようになる。当初は「コピーはコピー」と考えられていたが、オタクたちの世界観ではそれも変化している。ここにはもはや本物 = 大きな物語は存在せず、さまざまな要素のつまったデータベースがあるのみで、アウトプットとは要素をいかに組み合わせたかで評価されるという。 もう一つのキーワード、「動物」が意味するものは、「人間 = 欲望」vs「動物 = 欲求」という違い。前者がある意味きりがなく、他人とのかかわりの中で成立するものであるのに対し、後者は即物的で自己完結的なものであるという。 著者の意図はあくまでも議論の土台、見通しを提供することにあり、方向性を提示することではないという。しかし、もし著者の分析通りの世界がこれから広がるのだとすれば、かなり楽チンでさびしい世界が広がるであろう。あまりにも衝撃的な指摘が多く、うまくまとめられないが。。。 |