著者: | 大塚 英志 |
読み: | おおつか えいじ |
題名: | 『人身御供論―通過儀礼としての殺人―』 |
出版: | 角川文庫 |
発行: | 2002/07 |
解説: | 香山 リカ |
読了: | 2003/02/17 |
評価: | C+: ★★★ |
感想: |
著者が得意とする二つの異なる分野、民俗学とマンガをつないでしまおうという試み。キーワード、キーストーン(要石)となるのは「通過儀礼」。 通過儀礼は、人を成熟した大人、共同体の一員として認めるための社会的な装置として機能していた。まわりはもちろん本人も死と再生というステップを踏むことにより大人になることの認識と自覚が可能であった。大塚は現代を通過儀礼が成り立たなくなった時代ととらえ、その代替プロセスとして共同体に依存しない「個の成熟」の必要性とここに働く漫画、特にビルドゥングス・ロマンの論理を提示する。 一つ一つの小さな考察のステップにはなるほど、と思うのだが、全体としてこの議論がどこへ向かおうとしているのか、という点になるとちょっと首をひねってしまう。東浩紀の『動物化するポストモダン』を読んで「物語」論の限界と「データベース」論の有効性に影響されてしまったせいなのかもしれないが。 |