著者: | 岡本 太郎 |
読み: | おかもと たろう |
題名: | 『今日の芸術―時代を創造するものは誰か―』 |
出版: | 知恵の森文庫 |
発行: | 1999(1954) |
読了: | 2003/03/24 |
評価: | C: ★★★ |
感想: |
芸術は美しくあってはならない、など世間の常識とは逆さまの芸術の論を独自の観点から訴える。主張そのものは面白く、最初にこの本が世に問われてから40年経った今でも有効打撃になりうる。芸術とは否定、破壊、創造、新規であり芸道(茶道書道など)は相続、継続、再生産である、など。 思い出したのはあるテレビの深夜番組。小学生の子が、ひたすら画用紙を真っ黒に塗りつぶし始める。親も教師もカウンセラーもうろたえたり心の病だと決め付けたり互いを非難し始めたり。しかしある新米教師が発見する。もっと描かせろ、と。結果できあがったのは、超巨大な鯨の絵。小学生の男の子が描きたかったのは、一枚の画用紙なんかには収まりきらない鯨の大きさだった、というお話。お勉強しすぎたせいで既成概念を打ち破る進歩派気取りが一番既成概念にとらわれてしまっているという皮肉。テレビではそこまで語っていなかったけど鋭い作品だった。 しかしやはり考えてしまう。否定、破壊、創造、新規といった要素は強者に属するものなのではないか、と。独立した確固たる自分を持つものだけに許される表現ではないのか? 孤独に耐えうる強さなしにはなしえない表現なのではないか? ただ、やはりこの人は文字の人ではない。同じ内容を講演で聞きたかった。 三森塾2003年4月度の課題図書。 |