著者: | 塩野 七生 |
読み: | しおの ななみ |
題名: | 『チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷』 |
出版: | 新潮文庫 |
発行: | 1982(1970) |
読了: | 2003/03/29 |
評価: | C+: ★★★ |
感想: |
同僚に薦められて初めて読んでみた塩野七生。これが塩野七生ね。乾いたタッチ。抑えた筆致。声高に主張せずそれでいていつの間にか読者の耳(目)を捉えて離さない世界観の提示。「そんな面白いヤツがいたの、そんな時代だったの、ふーん」では済まされない歴史小説。上手い! でも、何か物足りない。 最後まで読んでやっと分かった。自分がそもそも「チェーザレ・ボルジア」を知らないのだ。著者が仮想敵としている「目的のためには手段を選ばない残酷冷徹な中世の君主」像を。マキャベリが君主の理想像を見出したというその徹底的な合理主義を。レオナルド・ダ・ヴィンチと意気投合したという近代的な先取性を。一冊しか読んでいないのにおこがましいが、思うに塩野七生の快感というのは熱い思いを冷たい文章で提示するその姿勢、既存の世界観や思い込みをその冷静で華麗な筆さばきで壊される点にあるのではないだろうか。それがこちらに足りなかった。 |