著者: | 田口 ランディ |
読み: | たぐち らんでぃ |
題名: | 『モザイク』 |
出版: | 幻冬舎文庫 |
発行: | 2003/04(2001/04) |
読了: | 2003/05/11 |
評価: | B+: ★★★★ |
感想: |
ワケありの人をある場所からある場所へと移動させるのが主人公の仕事。精神異常(と思われている人)を精神病院へ移動させることになるのだが、あるときその仕事で出会った正也という少年が移動中に逃亡していしまう。彼を捜索する旅は同時に自分の過去、人類の現在未来の探索の旅になり。。。 これまた「考えること」と「感じること」をテーマの一つして扱っているためグイグイ引きこまれた。 酒鬼薔薇、バスジャック、引きこもり、ダルイ、ウザイ、ぼんやり、現実感がない、など何を考えいているのか分からない若者たちは、社会の変化へ対応せざるを得なくなってあのような状態になっているのだ、その解は言語や論理を積み重ねていった先にはない、もっと大きな何かへと感覚的に繋がることである、というのが著者の主張。 三部作の前二作ではそれは巫女とのつながり、具体的にはsexだったが今回のキーワードは記憶。この世にある全ての生き物と物質が共有しているはずの原子レベルに宿る記憶が自分と繋がっていることを認識し、人間のOSを作り直せばもう一度コミュニケーションが可能になる、つまりそれが救いである、という(もっとも、このことを頭で分かるのではなく身体で分かる必要があるのだけれど)。???。正直に言ってわけがわからない。 桑田真澄で有名になった古武道の身体術、人間をコンピュータに見立てて使われるOSや通信という言葉など、流行ものを上手く消化しないまま使っている(OSの例えは三作目なのにこなれなてない)。ときどき底の浅さが見えてしまい嫌になるが、それでも何とか伝えたいというあせりにもにたスピード感に圧倒され腑に落ちる。 また、携帯電話に支配された生活を単に揶揄するだけではなく、その症状をアルコールなどと同じ依存症に、携帯でメールを打つ姿を神へ祈りを捧げる様子に見立てるなど、やさしさとやるせなさに満ちあふれた比喩には心を打たれる。 |