著者: | 中山 可穂 |
読み: | なかやま かほ |
題名: | 『深爪』 |
出版: | 新潮文庫 |
発行: | 2003/05(2000/06) |
読了: | 2003/07/05 |
評価: | B+: ★★★★ |
感想: |
これまたビアン(レズビアン)の甘く切なく苦しく悲しい恋の物語、、、と思っていたら見事に裏切られた。主な登場人物は四人。一人はいかにも中山作品が似合いそうな独身女性。もう一人は子持ちの主婦。もう一人はそのダンナ。そして主婦の新しい恋人。この顔ぶれをみるだけで?マークがいっぱい。 第一部、第三部は主人公と主婦、新しい恋人との恋物語。これはまあ、登場人物が女性ではあるけれど従来の中山作品の範疇。 第二部は、その主婦が新しい恋人と駆け落ちしてしまった後のダンナの葛藤の物語。これはすごい。あの中山が、中山らしい切り口でレズビアンという範疇からも疎外された凡サラリーマンを描いたのだ。女に妻を奪われた理不尽、小さな息子に対して母の役割をも果たさざるを得ない理不尽、離婚と養育権を要求してくる妻の理不尽、など自分がその恩恵や庇護を受けている間はまったく見えなかった様々な制度・観念とのバトルが描かれる。 |