著者: | 原 克 |
読み: | はら かつみ |
題名: | 『悪魔の発明と大衆操作―メディア全体主義の誕生―』 |
出版: | 集英社新書 |
発行: | 2003/06 |
読了: | 2003/08/08 |
評価: | B-: ★★★★ |
感想: |
ラジオ、テレビ、コンピュータという機器もしくはメディアの変遷と権力によるコントロールの関係をドイツ、日本、アメリカ中心に社会史的に追いかける。 テレビもラジオも受発信可能な双方向メディアとして誕生しながら受信専用機器になっていったこと、コンピュータがその前身であるパンチカードシステムの頃から代替可能なものをターゲットにしてきたこと、つまり個別性ではなく数字に還元可能なものをターゲットにしてきたことを指摘する。それが時の政府に国勢調査の手段として活用され、ナチスの「正確な」ユダヤ人対策を支えていた事実を「たまたま使い方が悪かった」のではなく、本質そのものである、と言い切るくだりではちょっと冷や汗がでる。コンピュータ業界に携わり住基ネットに複雑な思いを抱く身にはきつい指摘だ。 メディアとコミュニケーションのありかたに対して面白い迫り方。ラジオは当初は送信も可能なメディアであった(アマチュア無線と同じ)。それがマニアックな送受信可能機と大量生産低コストの受信専用機にはっきりと利用者が分かれていき、後者ばかりになる歴史。テレビははじめから受信専用機として普及したが、テレビ電話的な使い方は実はごく初期からあったことを指摘する。「あなた本当に自分で選んで聞いて/見ていますか?」 |