著者: | 森永 卓郎 |
読み: | もりなが たくろう |
題名: | 『シンプル人生の経済設計』 |
出版: | 中公新書ラクレ |
発行: | 2002 |
読了: | 2003/09/16 |
評価: | C+: ★★★ |
感想: |
仕事は忙しい。でも頼りにされていい気持ち。そういう自分に酔いそうな危機感を感じているので酔い覚ましのつもりで手に取った。内橋克人のように「働きすぎるな。悲観するな。全員が勝者になることはできないのだ。足るを知ろう。」をある程度期待してのこと。 半分満足半分不満。不満点の第一は話があまりにも荒っぽいこと。説得の材料としてあげているデータ、事例、例え話が論理的に破綻していることが多い。両面ある物事の一面しか語らない。年収300万円の好きなことをして暮らしているフリーターと年収2000万円のサラリーマンの可処分所得を比べてどちらが幸せだろうか、後者は年間何百万円もの税金と各種年金などを納めているのだ、という。税金を納める人がいなくなったら世の中の公的なセーフネットはどうなるのだ。著者はこの本の別の箇所でいざとなったら「権利なのだから」自己破産や失業保険をもらえばいい、といっているのだ。その財源はどこから捻出するというのだ。同時に読んでいる良書『民主と愛国』に登場する共同体再生のために熱く熱く語った50年前の先輩たちの姿が脳裏に焼きついている今の自分には唾棄すべき主張でしかない。 ところが、読んで納得してしまった点もある。曰く、景気は回復する。企業の業績も回復する。しかしあなたの給料は変わらないかさらに下がる。曰く、あなたは自分が勝ち組になれると思っているかなりたいと思っているであろう。では聞く。あなたのライバルは誰?今、ヘッドハンターから転職の誘いがあるか?前の質問に会社の同期を思い浮かべた人は即アウト。グローバルに見て同業他社のトップを思い浮かべた人にのみ勝ち組になる「チャンス」がある。権利や視覚ではない。後者の質問に「前はあったよ」という人もアウト。今、この時でないと意味がない。なぜか?「勝ち組」になれるのは短期的に見て2割、中長期的には2%のみだからだ、そんな人は本書を読んでいない、という。失笑と納得。そこで著者はいう。負け組入りを前提とした人生設計をすぐ建てろと。そしてサラリーマン人生の三大不良資産、専業主婦、子供、住宅ローンをすぐ片付けろ、という。これまた森永特有のどぎつい例えなのだがそれは読んでのお楽しみ。 |